上海中医薬大学 日本校校長

夏の私、夏の暮らしに漢方を

 

 

日本は春・夏・秋・冬と四季が明らかに分かれている島国で

日本の夏の季節は約3ヶ月続き、通常7月、8月及び9月が夏の季節です。

 

夏の半ばである真夏の8月は、35度超える高温の日々が続きます。

そんな時に「夏バテ」という身体の不調反応が起こりやすく、年配の方や身体の弱い方は

熱中症にかかりやすくなります。

また、夏バテだけではなく、体の不調から隠れていた疾患があらわれ長引くこと多いことが

この季節の特徴です。

 

これから訪れる「夏季の生活」について養生の知識をお伝えします。

養生を実践して、うだるような暑さを、過ごしやすい日々に変えていきましょう。

 

 

 

夏の養生ポイント

 

夏の養生ポイントは、清涼、静心、水分補給が一番大事なことです。

 

一つ目に、生活の環境は清涼の風が通り易く涼しい室内、または陰があるところで過ごすことです。

できれば、エアコンがきいた部屋に長時間居ないことも大切です。

 長時間エアコンがきいた部屋にいると、自律神経にダメージを受け、体温調節が上手にできなくなって

しまいます。外気と室内の急激な温度変化についていけず、体内にズレが生じ体に不調を感じ不調を招い

てしまうのです。

そのため、適度な温度管理と、体温調整を心がけるましょう。

 

二つ目に、普段の生活リズムを見直し、こころと体を落ち着かせることです。

のんびりとした気持ちで暮らすことが清心へとつながるのです。

 

三つ目に、暑さで大量の汗をかくと、全身の水分不足により眩暈・頭痛などの脳の不調を感じます。

その他、血の潤いも失われ血行不良を招き、動悸・息切れなどにつながることもあります。

体の水分だけではなく、汗をかくと気(生命エネルギー)も失われて、疲労や倦怠感を感じやすくなるの

です。

こまめに水分摂取、潤いのある食材などを積極的に摂取して、体が水分不足にならないように

しましょう。

 

 

 

夏の湿気と吹き飛ばす

 

夏は湿気が多い季節で、消化機能を司る脾と胃は湿気により、その働きをを鈍くなるため、

体がだるい、食欲不振、下痢などに合わせて、舌が厚く、舌の苔がなどの症状が現れます。

 

中医学の考え方では、生活環境の見直しと同時に、余分な湿気を取り除き消化機能を整える、

健脾除湿(けんぴじょしつ)の養生法を用いられるます。

 

それぞれの特性を合わせた健脾除湿茶を飲み、身体の余分な熱と湿気を取り、消化器にかかる

負担を減らします。

 

《健脾除湿茶》けんぴじょしつ茶

苦丁(くうてい):苦味があり、熱を冷ます夏場によく利用される

金銀花(キンギンカ)熱をとる働き、熱を持った皮膚症状・消化器トラブルにも用いられる

菊花(キッカ):目の疲れや熱を取るのに用いられる

 

 

また、食材としても利用される

紫蘇葉(しそ)、麦芽、茴香(ウイキョウ・フェンネル)、山椒、山楂(サンザシ)、

甘草(カンゾウ)、薄荷などを食べることも養生になります。

 

その他、薬膳粥には健脾除湿のレシピもあります。

 

健脾除湿粥レシピ

材料(1名分)

・お米60g

・麦芽3g

・茴香0.3g

・山椒0.1g

・山楂3g

・甘草2g

 

トッピング(味付け)

・ミント 数枚

・シソ 数枚

・醤油 適量

・ゴマ 適量

・おろしニンニク

 

作り方

1)材料に水600ml、弱火で30分位炊上げ、粗熱をとり室温まで冷まし、ミントを入れます。

2)シソはお湯を掛け、水分を絞り、醤油、胡麻、おろしニンニクを掛けて混ぜあわせて完成。

 

脾(消化器)の熱と湿気をとり、夏バテ予防にいいです。

 

 

体の中の熱さをさます

 

夏は体温に近い高温で、特に夜でも30度以上の生活が続きます。

汗の流れ、睡眠への影響、体の疲労が連日続くと、熱中症を起こし易くなりますので、扇風機や

クーラの活用、水分補給が大切になります。

 

体の熱を冷ます生薬を組み合わせた、清熱消暑茶で水分補給をし、体の中から熱をとります。

 

《清熱消暑茶》せいねつしょうしょ茶

蓮心(レンシン)精神から生じる胃腸の不具合、動悸、不眠などを改善

薄荷(ハッカ)体表部の風熱を発散し、頭痛や目の充血・のどの痛みを改善胃の働きを高める

金銀花(キンギンカ)熱をとる働き、熱を持った皮膚症状・消化器トラブルにも用いられる

 

また、食材としても利用される

石菖蒲(セキショウジ)、紫蘇(しそ)、葉丁香(ちょうこう)、陳皮(チンピ)、ドクダミ、

菊花、蓮心(レンシン)、綠豆などを食べることも養生になります。

 

 

薬膳粥には清熱消暑のレシピもあります。

健脾除湿粥のレシピ

材料(1名分)

・お米60g

・綠豆5g

・蓮心1g

・石菖蒲1g

・菊花1g

・丁香 0.3g

 

トッピング(味付け)

・ドクダミ 適量

・シソ 数枚

・醤油 適量

・ゴマ 適量

・おろしニンニク 適量

 

作り方

1) 材料水600ml、弱火で30分位炊くと出来上がり。粗熱をとり室温まで冷ました後、新鮮なシソを数枚を入れます。

 

2) ドクダミにお湯を掛け、水分を絞って、醤油、ゴマ、おろしニンニクを掛けて混ぜます。

 

体の中から余分な熱を取って、過ごしやすい夏をむかえましょう。

 

 

 

効果的な水分補給

 

真夏「陽」の働きが盛んなため、肺と腎の「陰」が損傷され易くなります。

中医学では、肺腎の「陰」を補益することは非常に重要で、肺と腎の損傷に防ぐために、

ミネラルワォーターを一日1,000mlの摂取に加え、野菜スープやスイカなど有機性

(植物性、ボタニカル)水分の補給が必要です。

成人のトータルの補水量は2,500mlが必要とされていますので水分摂取は必要不可欠です。

 

肺と腎を補益する生薬を組み合わせた、滋養真陰茶を飲んで損傷を防止していきましょう。

 

《滋養真陰茶》じようしんいん茶

朝鲜人参:滋養強壮効果

白木耳(白きくらげ):肺の働きを良くし皮膚の乾燥や便秘を改善、空咳、咽の渇きに有効。

枸杞(くこ):肝機能の活性化、疲労回復、冷え症改善

甘草(カンゾウ):消炎作用

 

また、食材としても利用される

ナツメ、西洋人参、枸杞(クコ)、甘草(カンゾウ)、白木耳(白きくらげ)、百合(ゆり)、

决明子(ケツメイシ)などを食べることも養生になります。

 

薬膳粥には滋養真陰のレシピもあります。

滋養真陰粥のレシピ

材料(1名分)

・お米60g

・西洋人参 1g

・枸杞 1g

・甘草 1g

・百合 5g

・决明子0.5g

 

トッピング(味付け)

・白木耳(白きくらげ)5g

・棗(ナツメ)5つ

・蜂蜜2g

 

作り方

1)材料に水600ml、弱火で30分位炊くと出来上がり。

2) 白木耳、棗(ナツメ)5つに400ml水、約1時間を掛けででボイルし、冷めたら、蜂蜜2gを加えて混ぜます。

 

効果的に水分補給をして肺と腎を労りましょう。

 

 

 

夏のまとめ

 

 

夏は体を労わる他に、食中毒などの食衛生は十分に注意をしなければなりません。

できればすべての新鮮な食品は冷蔵庫に保存し、室内に置かないようにしましょう。

 

また、高温の真夏では、食欲が落ちる人も多いです。

その場合はお粥や、スープなど液体の食品を食べ、脂肪分の多い焼き肉、ケーキなどは

できれ控えましょう。

スイカ、メロン、モモなど水分の多い果物をよく食べて、より多くの水分を摂取してください。

毎日の水分摂取量は2,500mlが基本的です。

特に年配の方は体の水分に対する反応が若い人より鈍くなりますので、熱中症を防止するために、

「決まった時間に決まった量の水分を取る定」水分補給の習慣が必要です。

 

過ごしやすい生活を送る上で、暮らしを見つめる養生が大切ですね。

養生法を実践して、暑い夏を楽しみましょう。

 

 

 

上海中医薬大学 日本校校長