上海中医薬大学 日本校校長
秋も深まり、金木犀(キンモクセイ)の香りを感じる季節となりましたが
皆さまいかがお過ごしですか?
実は金木犀は原産国は中国で、観賞用とはしてはもちろん
お茶・お酒・お菓子、漢方生薬として親みがあるです。
秋は気の消費が激しくなる時期ですので、金木犀はもちろん紅葉観賞や
補気食材を取り入れ、心もカラダも健康に過ごしていきましょう。
血管と血圧とは?
気血水のバランスがいいこと = 健康 と言われていますが、
気血水の中で血(血液)は大切な働き、役目を担っています。
血管は生命を維持するための唯一の物質輸送ルートです。
血管内の血液は物質輸送の「クルマ」、そして、この「クルマ」の動力は血圧です。
血管とは全身を隈なくめぐり、その中を流れる血液によって、さまざまな
細胞、組織に酸素や栄養が供給され、代謝から出された二酸化炭素、 老廃物が休みなく
排泄に運ばれています。
人間の身体は約60兆個の細胞からなり、すべて血管と繋がっています。
血管の長さは、地球の2周以上の約9万kmあり、血管内腔の総面積はテニスコート換算で
約6面にも相当する3,000㎡に達していると言われています。
心臓が収縮して血液を押し出すときに高くなり、拡張して血液の流れが緩やかなときは低くなります。
血圧の高さは、物理的には心臓が血液を押し出す力と血管の抵抗で決まります。
心臓の拍出量が増えたり、血管の収縮及び動脈の硬化などで血管の抵抗が大きくなったりすると、
血圧は上がります。
また、血圧は、腎臓や中枢神経や自律神経、内分泌系の副腎ホルモンや食塩など多くの因子に
よって調節されています。
血圧の異常、血管の疾病は健康と寿命に大きな脅威です。
この血圧と血管の健康を維持する方法として、
運動法、調神法、起居法、食養法、四季法、薬補法などの方法があります。
運動法
生命は運動するものです。
よく体を鍛えれば体質が増強され、心臓と血管の健康が保たれるようになります。
健康的な運動は特に血圧調節機能や血管の弾力性維持に大きな影響があります。
「流れている水は腐らず、たえず動く戸の(回転軸)は虫が食わない。」
という諺(ことわざ)があります。
健康運動の方法は様々あり、中国の
「導引(どういん)」
「五禽戯(ごきんぎ)」
「易筋経(えききんけい)」
「八段錦(はちだんきん)」
から広く普及している太極拳や気功があります。
また、水泳、ジョキング、テニスなどの運動もあります。
適切な健康運動は血管の老化、血圧の異常を防ぐことを証明されています。
調神法
「病気」という言葉が「病は気から」と言うように、肉体的な疾病も精神的な影響から
くるものが大きいということです。
人は精神や情緒の変化が生理活動の重要な構成部分であります。
こころの動揺が激しい、あるいは過度のストレスが長く続く場合などは
多くの疾病の発生を招くことになります。
したがって、中医学の養生では
恬(てん)= 安静
淡(たん)= 愉快
虚(きょ)= 無くなる
無(む)=欲張るな
と表します。
どの欲をなくして心を安定させると言うことです。
また、音楽、アロマ、温泉、旅行などストレス改善し、血圧を正常に戻す方法もあります。
起居法
全ての生命は時計を付けられています。
健康人は睡眠、飲食、起居など規則正しい生活をしなさいということです。
普段から生活の規律を正しく守ることは健康の基本です。
食事を抜いたり、寝る時間を削ったりするのは精神的な疲労を増やすだけでなく、
自律神経や内分泌の乱れを引き起こし、血圧も異常になりやすいです。
このような不規則な状態を続けていると生活習慣病や過労死にもなりかねないのは当然です。
食事や睡眠の不規則、また飲水や排泄など体が求める生理を我慢することは結果的に
病気を引き起こすことになります。
四季法
人は生き物ですが、大自然の一部分です。
真夏の暑さで血管は拡張、真冬の寒さで血管は収縮するように、
四季の気候変化は必ず体に影響します。
自然界の変化に無理なく従うことによって、体内の営気は滞りなく巡り、
衛気はしっかりと体表を防衛し邪気(風、暑、湿、燥、寒などの自然界からくる悪い刺激)の
侵害を避けることができるということです。
五行学説では、春、夏、長夏、秋、冬の五季に分けます。
人においては
「春に肝臓を養う、夏に心臓を養う、長夏に脾臓を養う、秋に肺を養う、冬に腎臓を養う」
と言う五臓の養生法。
「春と夏には陽を養う、秋と冬には陰を養う」
と言う四季の養生に対して重要な意義を持っています。
一年は二十四節気があります。
「順時養生(じゅんじようじょう:季節にしたがい養生する)」
は養生医学の中の一つのきわめて重要な原則であり、言い換えれば一つ延命長寿の秘訣です。
食養法
食物の養生は二つの意味を持っています。
一つは
季節・風土に応じた穀菜果肉などから十分な栄養素の補充
することです。
もう一つは、
酸・苦・甘・辛・鹹の五味など医( 薬 )食同源
の考え方により、漢方生薬であると同時に食物・香辛料であるものを料理に
積極的に利用する方法です。
これを発展させ、生薬を配合する「薬膳」と呼ばれる料理法も近年流行しつつあります。
その土地の旬の物を、自分の体質に合わせて食することは大切なのです。
薬補法
自然の薬草から作られた漢方薬には血圧の安定や血管を保護する作用があることが証明されています。
血圧や血管に作用する漢方薬に「弁証論治」の下で診断・処方された漢方薬は
患者の体に一番合ったものとなされています。
多くの漢方専門医による臨床経験や研究から、慢性の心臓血管疾患に大変高い治療効果が
あることがわかっています。
要するに、薬効のある自然の植物が、血圧の回復力を向上させたり、血管の丈夫さを補ったり
するということです。
これは、漢方薬という天然の産物は同じ天然の産物である人類の体に治療作用と調節作用を
及ぼすという自然の理にかなったことです。
また、漢方薬は免疫機能の増加やアンチエイジング作用によって、
疾病の治療、症状の改善、健康の維持作用があるということになるわけです。
「健康は一日にしてならず」の言葉があるように、
私たちの心とカラダは日々の養生の積み重ねで作られていきます。
明日の笑顔を今日の養生で、作っていきましょう。
上海中医薬大学 日本校校長